IST 平成29年度 講演会

活動報告

 演 題「スポーツ脳振盪」
 講 師 染矢 滋 先生
  浅ノ川総合病院 リハビリテーション科 リハビリテーションセンター長
 日 時:平成30年4月8日(日) 11時~12時30分

 総会に引き続き、平成29年度講演会が開催された。スポーツナース講習会を受講されているナースの皆様も数名参加があった。スポーツ脳振盪は、現場で活動を行っているトレーナーにとっては知っておくべき知識であり、特にコンタクトスポーツをみているトレーナーにとっては頻繁に遭遇する可能性がある。
はじめに脳振盪に関して、FIFAで3分間ルール(脳振盪かどうかチームドクターが判断する権限)を導入することになったワールドカップブラジル大会でのグラマー選手の事例が紹介された。また、世界や日本においての頭部外傷に関するガイドラインについての話があった。
内容は、大きく六つの項目に分けての話であった。まず、第一に脳振盪について、発生機序や症状、意識障害スケールについて話があった。頭痛、めまい等の自覚症状、意識消失、痙攣などの他覚的所見、怒りやすい等の行動の変化、思いだせない等の認知機能障害、家へ帰ってからの睡眠障害など脳振盪の症状を理解することが重要との話であった。
第二に、日本臨床スポーツ医学会学術委員会脳神経外科部会が提唱している「頭部外傷10か条の提言」について一つずつ話があった。①頭を強く打っていなくても安心できない、②意識障害がなくても脳振盪である、③どのような時に脳神経外科を受診するか、④搬送時には厳重な注意が必要、⑤意識障害から回復しても注意が必要、⑥脳振盪後すぐにプレーに戻ってはいけない、⑦繰り返し受傷することがないよう注意、⑧受診する医療機関を日頃から決めておこう、⑨体調がすぐれない選手は試合や練習に参加させない、⑩頭部外傷が多いスポーツではメディカルチェックを、が提言で、それぞれの内容や問題点などについて話があった。
第三は、選手が脳振盪を受傷していないかどうかを評価するための標準化したツールで、4項目で構成されるSCAT(Sport Concussion Assessment Tool-5th Edition:スポーツによる脳振盪評価ツール-第5版)についての説明があった。
第四は、現場での対応として、症状発症後24時間の変化が重要であることや、単独行動は避けること、また、練習や試合に復帰する方法としてのGRTP(graduated return to play protocol:段階的競技復帰プロトコール)の説明があった。
第五は、サッカー、ラグビー、アメフト、野球、柔道、スキー等の各スポーツ団体での頭部外傷や脳振盪に対する取り組みの説明があった。
最後に第六として、慢性外傷性脳症という症状を、アメリカプロフットボール選手を例に説明があった。長期的には、健忘、抑うつ、認知症など精神症状を発症することがあり、それが自殺や事件、事故に繋がる可能性も示唆され、選手の将来を考えると現在の判断の重要性を感じた。
脳振盪について結びとして、昨今話題になったアイススケートで活躍する羽生結弦選手が練習中に他選手と激突した後、脳振盪を起こしたこと。その後、演技を実施され、選手をはじめ様々な関係者の思惑があるなか、いつ誰が、どのような理由で競技を止めるか?止められるか?が難しい問題だということであった。
北岡会長の講演に対する挨拶の中で、現場で活動するトレーナーを含めた医療者は、本日の講演会の内容を頭に入れて、医療者として意見を言えるようにしておかなければならないとの指摘があり、大事な提言であり心に留めさせていただき、講演会は終了した。
(文章作成:総務部長 田中良和)

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